7月1日は『びわ湖の日』。それは滋賀県民が「美しいびわ湖を取り戻そう!」と一致団結した記念日です。
今月は、私たちにとって最も身近で大切な「びわ湖」について考えてみませんか。
『びわ湖の日』は「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(琵琶湖条例)」が1980年に施行されたのを記念して、その翌年に制定されました。“富栄養化”とは、植物やプランクトンの栄養となる窒素やリンが海や河川に増えすぎてしまうこと。「栄養ならいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、主に洗剤や農薬などに含まれる窒素やリンが大量に流出すると、植物やプランクトンが爆発的に増えすぎて、深刻な水質汚濁の原因になるのです。
日本では、高度経済成長期の1960~70年代に水質汚濁が社会問題になっていました。びわ湖では1977年に赤潮
が大発生。水道水から異臭が漂い、養魚場のアユやコイが大量に死にました。そこで、当時の滋賀県民は「リンを含む合成洗剤の使用をやめ、粉石けんを使おう」と、いわゆる石けん運動を開始。この盛り上がりが県をも動かし、全国に先駆けて環境保全を目的とした琵琶湖条例が施行されました。ところでみなさんは、びわ湖が何歳だかご存知ですか? 実は推定年齢400万歳。この地域に広い湖ができてからでも、約40万年経っていると考えられています。本来、湖の寿命は河川から絶えず流れ込む土砂によって埋もれるため、だいたい1万年以内が一般的。それがこれほど長く存在し続けるのは、びわ湖が大地と大地の裂け目にできた断層湖だからです。
断層湖とは、断層の動きによって生じたくぼ地に水が溜まってできた湖。断層が引き起こす周期的な地震によって湖底がどんどん深くなり、400本以上の河川から土砂がびわ湖に流れ込んでも、満々と水をたたえていられます。
びわ湖のように10万年以上の歴史を持つ湖を「古代湖」とよびますが、広く世界を見渡してもわずか20ほどしかありません。中でもびわ湖は、地殻変動の激しい小さな島国でおよそ400万年もあり続けている。これはすごく珍しいことなのです。
古代湖に共通する特徴の一つに、その地域にしか生息しない固有種の多さがあります。びわ湖には魚類や貝類、水生昆虫類など60種類以上の固有種がいて、そのうち16種類が魚類です。
中でも子どもたちに大人気なのがビワコオオナマズ。体長は大きなもので1m以上。日本最大級の淡水魚で大昔は西日本に広く祖先種がいたと考えられています。今ではびわ湖と淀川流域にしか生き残っていない固有種です。
また、ちょっとユニークな生態を持つのがワタカ。草食性であることからウマウオ(馬魚)の異名を持ちますが、古い祖先種はエビや小魚を食べる雑食性だった可能性も。びわ湖の環境に適応するため草食に転換したと考えられ、そのしたたかな生存戦略に驚かされるばかりです。
ちなみに近年、滅多にお目にかかれない幻の魚といえば湖北の岩礁地帯に生息するアブラヒガイ。ヒガイの仲間は、あまりのおいしさに明治天皇が好んで食され、魚へんに「皇」と書いて「鰉」という字になりました。
このように個性豊かなびわ湖の固有種ですが、年々その個体数が減少しています。琵琶湖条例や下水道の整備によって、びわ湖の水質は改善されています。しかし、オオクチバスやブルーギルなどの外来種が在来魚を食べてしまい、コンクリートで湖岸を固める工事によって魚の産卵場所が失われつつあります。
今、私たちにできるのは、まずびわ湖に関心を持つことです。現代社会では人々の暮らしと自然の営みが大きく分断されています。清掃活動や保全活動に参加して、まずは自分の目で現場の状況を見てください。それがびわ湖と固有種を守る大きな一歩になるのです。
開催日 | 9月28日(土) |
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集合場所 | ピエリ守山 駐車場 |
参加費 | 無料 |
イベントの詳細は、次回スパイラル8月号でお知らせします。