「食べたい時に食べたい分だけ焼きたてパンを」をコンセプトに、家庭で香ばしい焼きたてパンを楽しめる、ロングセラー商品「CO・OPブラウンサーブロール」。実はアメリカ生まれというユニークな生い立ちから、家でおいしく仕上げ焼きするコツまで、製造元の巽製粉株式会社(以下巽製粉)にお話をうかがいました。
「よく質問されるのが、“白いパンなのになぜブラウンなの?”ということ」と話すのは、巽製粉営業部長の大堂敦大さん。
完全に火を通さず半焼成したパンをトースターに入れ、焼き色(ブラウン)を付けてから食卓に提供(サーブ)するので、ブラウンサーブロールという名前になりました。そもそもは、ならコープの職員が研修先のアメリカで出会い「これはいい!」と、地元奈良県の巽製粉に商品化を依頼したのがはじまりです。
現地では冷凍商品でしたが、解凍する手間を省いた冷蔵商品にし、小さな子どもでも食べやすいよう直径12センチの小ぶりサイズに改良。1986(昭和61)年に販売を開始しました。
巽製粉の本社があるのは、三輪そうめんの産地で知られる奈良県桜井市。そうめんの原料である小麦粉の製粉所として1877(明治10)年に創業しました。現在は製造委託した小麦粉を販売していますが、長年培った製粉のノウハウを生かそうと、1973(昭和48)年からパンと手延べそうめんの製造をしています。
パンの原料に選んでいるのがカナダ・アメリカ産小麦。「国内産に比べ、ふっくら仕上がります。しかも国内産小麦は量の確保が難しく、半年ごとに価格が変動し安定しません」と大堂さん。現在輸入されているカナダ・アメリカ産小麦は、農林水産省が厳しくチェックしたもの。国のお墨付きを得た安全な小麦です。
さらにパンのフワフワ感を持続するため、2回に分けてこねる中種法を採用。一次発酵で約4時間、二次発酵で1時間じっくり発酵した生地を、通常の210度よりも低温の150~160度で焼くことで、しっかり中まで火を入れつつも完全に焼き上げない半焼成にしています。だから袋を開けた瞬間、イースト(酵母)の香りがかすかに残っています。
最近ではホームベーカリーでパンを焼く人も増えましたが、手間もかかり、少量だけ作るのはちょっと面倒です。その点、CO・OPブラウンサーブロールなら子どもは1本、大人は2本と食べたい分だけパッと焼けるので、忙しい朝にもぴったりです。
巽製粉は2018年2月、食パンを焼くオーブンが原因で火災を経験しました。人的被害はなかったものの、CO・OPブラウンサーブロールの生産を一時止めていました。その後、最新の設備を導入し、発酵室も整備し、CO・OPブラウンサーブロールの製造ラインを一新。技術革新が進んだことで、卵不使用でもボリュームのあるパンを作れるようになりました。
「これで卵アレルギーを持つ方にも安心して食べてもらえます」と、笑顔を見せる大堂さん。予期せぬ災難に見舞われましたが、力強く復活を遂げたのです。組合員の多くから期待の声が寄せられています。
野菜やフルーツなどを挟んでアレンジするのもおすすめです。ただし、包丁で切れ目を入れる場合は必ず焼く前にしておきましょう。焼いた後は柔らかすぎてうまく切れ目が入りません!
焼き時間の目安は約2分ですが、なるべくトースターの前から離れずに。焼き色が付き始めたらすぐタイマーを止めてください。庫内にしばらく放置しておけば、余熱でさらにキツネ色に仕上がります。
「焦がしてしまうかも…」と気になる方はトースター用のトレイにアルミホイルを敷き、ブラウンサーブロールをタテに並べて置いてください。慣れてきたら焼き網に直置きでも大丈夫! ちなみに電子レンジでは焼き色が付きにくいので、あまりおすすめしていません。
基本的には冷蔵庫に保管して製造日より14日、お手元に届いて10日以内に食べきるようにしましょう。冷蔵庫がパンパンの場合は、1本ずつラップに包んだり、野菜室に移動したりするのもOK。
絶対にしないでほしいのは、冷凍室に保管すること。せっかく焼いても中が少し冷たいまま……なんてことになりかねません。
2018年2月の火災により製造ラインをリニューアル。現在食パンを1日当たり3万3000斤、ドッグやロールパンなどを6万本生産。手延べ素麺の製造、製粉販売も行う。