お皿にぱっと盛るだけでおしゃれなサラダのできあがり。しかも本体価格100円以下で、組合員の間でも根強い人気の「小原さんちのベビーリーフ」。今回は20年前からベビーリーフを育てる有限会社ベジタブル・ユーを訪ねました。
思わず深呼吸したくなる澄みきった空の下、全長100mの大きなビニールハウスが並んでいます。ここは熊本県熊本市にある(有)ベジタブル・ユーの野菜畑。ハウスの中では今日も元気にベビーリーフが育っています。
ベビーリーフとは文字通り、葉物野菜の赤ちゃんのこと。「これからどんどん伸びるぞ!」という成長段階の野菜のため、大きく育つのに必要な栄養が中にたっぷり詰まっています。しかも「小原さんちのベビーリーフ」は、平均して9種類の幼葉をミックス。いわば9種類の野菜の栄養が1度に摂れてしまうのです。
「最初はなかなか売れませんでしたよ(笑)」とベジタブル・ユーの社長・小原弘一さん。そもそもベビーリーフは欧米生まれの生食用野菜。アメリカを現地視察に訪れた小原さんが「これは面白い!」と日本に持ち帰り、手探りで栽培をスタートさせました。
「当時は単価も高くて1袋300円で販売していたかな。ようやく売れゆきに火がついたのは、関東のレストランで使われてからですね」。現在では、レッドロメインやレッドオークなどのレタス科、ピノグリーンや水菜、壬生菜などのアブラナ科、香りの強いルッコラや春菊など13種類を育てており、その中から季節によって9種類をブレンドしています。
「幼葉は時期によって味が少しずつ変わります。だから私が実際に食べて、毎日配合を決定しています」。たとえば、ルッコラや春菊など香りの強い野菜を入れすぎると全体のバランスが悪くなる。一緒に食べても、1枚ずつでもきちんとおいしい。そんな小原さんちのベビーリーフは、配合の仕方はもちろん、栽培方法にも独自のこだわりをもっています。
小原さんは熊本市内で代々続く農家の4代目。以前はメロンやトマトを栽培し、若い頃から土づくりと真剣に向き合ってきました。「今の日本の農業は化学肥料を使い過ぎています。山や森を見てください。人が肥料をまかなくても、草木はちゃんと育っているでしょう?」。
小原さんの農業のお手本は、自然の中の山の営み。とくに“腐植”とよばれる『微生物が分解した落ち葉の残骸』を、土の中に混ぜています。そっと土を触ってみると、気持ちいいくらいにふかふか!「この中には30種類くらいの微生物が生きています。腐植が天然の肥料代わりになっているというわけです」。
メロンを栽培していた頃から化学肥料に頼らずに農業を続けてきた小原さん。ベビーリーフに関しては20年間、1度も連作障害を起こしたことはありません。連作障害とは、同じ畑で同じ野菜を作り続けると必ず起きるといわれる生育不良のこと。しかも、1つのハウスで年間14回も植え付けから収穫を繰り返しています。これはもはや農業界にとっては驚異的な数字。そんな小原さんの手法を学ぼうと、毎年全国の農家さんが視察に来られています。
「社長はベビーリーフと会話ができるんです。『ハウスの中がこんなに暑くて、お前ならどう思う?』って。そういう視点でものを見る人です」と、スタッフの吉良智也さん。摘みとる作業も、優しく手作業で行っています。
実はこの日、コープしがから組合員担当の矢野秀樹さんと木村圭司さんが産地研修に訪れていました。少しでも農家さんの苦労を知ろうと作業をお手伝いした2人は、「仕事にも商品にもプライドを持ち、『食べる人を満足させたい』と願う気持ちがひしひしと伝わりました」と笑顔。小原さんのベビーリーフへのまっすぐな想いは、ここから組合員の元へ届けられます。
毎日ベビーリーフを食べていますが、味付けは塩とオリーブオイルのみ。素材を楽しむものだから、ドレッシングはかけません。塩はミネラルたっぷりの天日塩がおすすめです!
熊本県熊本市にある6.2haの広大な農場で、化学肥料に頼らない農業を35年以上続けています。