戦国時代の天下人の名を冠した、なんだかすごいネギがある! そんな評判が広まり始めたのは、今から13年前のこと。「関東の白ネギとは違う、関西らしい白ネギを作ろう」と、ネギの産地である近江八幡市安土町の農家が誕生させました。
そもそも安土町下豊浦地区では「豊浦ねぎ」という伝統野菜を育てており、さらさらとした水はけのよい土壌がネギの栽培に向く地域です。「関東の白ネギはバリバリと堅いイメージがありますが、僕らは逆に太くて柔らかく、ジューシーで甘い白ネギを目指しました」と、安土信長葱の生みの親の1人である、ネギ農家の井上正人さん。
ようやくおいしいネギができたものの、滋賀県ではあまり白ネギになじみがありません。「極太1本葱」という名称で販売を始めましたが規格もバラバラで、白ネギの特長である軟白(白い部分)も20センチほどしかありませんでした。当時のコープしがの担当者とアイディアを出し合い「もう少しインパクトのあるものにしよう」と奮起。軟白を5センチ伸ばして25センチにすることに成功しました。そして、安土にゆかりの深い信長公にあやかって「信長葱」と名称も変更しました。すると注文が殺到、今では、シーズンを待ちわびるファンの多い商品になり、全国の料亭などでも使われるまでになりました。2011年には、「安土信長葱」という名称で商標登録もしました。
「太いネギを育てるには、植え付け本数を減らさなければなりません」という井上さん。通常のネギより太く育てる安土信長葱は、間隔も広くとって定植するので、ゆったり広いスペースでのびのび育ちます。しかし、植え付け本数が少ないために収穫量は半減。その上、軟白が25センチ以上、1袋300グラム以上の重量を2本または3本で満たすという厳しい規格が設けられているため、生育不良となった場合はただの白ネギになってしまいます。
安土信長葱の最大の特長は、その糖度の高さ。「だいたい14度くらいかな。スイカよりもやや甘いレベルですね」。そういいながら笑顔を見せる井上さんは、窒素・リン酸・カリの3大要素がバランスよく含まれた鶏糞を主な肥料として使用しています。即効性のある化成肥料も使用しますが、緩効性の有機肥料でじわじわと栄養分を与えた方が苦味が出ず、糖度が増すそうです。
そして1月、旬を迎えた安土信長葱はずっしり重くなり、コープしがの産直野菜として組合員の元へ届けられます。
井上さんも大好物♪
ネギのシャキシャキ感を楽しむならさっとダシにくぐらせる程度。逆にクタクタに煮込んで食べると、甘みがさらに際立ちます。
シンプルイズベスト!
焦げた外皮は口当たりが悪いので、食べる前に取ってしまうほうがオススメです。
ブランド化した以上、よそのネギには負けたくない。「さすが安土信長葱だね!」といわれる存在でありたい。そのためには日々、太さ・甘さの向上を目指して進歩することが大切だと思います。
安土信長葱の出荷は11~3月中旬まで。現在は、安土葱部会に所属する22名の農家で生産しています。