琵琶のしずく(500㎖)
日本の食卓で最も愛用されている調味料といえばしょうゆ。煮たり、焼いたり、かけたりと毎日使っているはずなのに、意外に知らないことが多いのも事実です。
例えばしょうゆのいい香りには、リンゴやバラ、バニラなど300種類以上の香気成分が含まれていること。魚や肉の生臭みを消したり、強い殺菌作用を持つこと。ほかにもまだまだありますが、日本古来の優れた万能調味料であるしょうゆが作り出される現場を今回は6人の組合員がレポートしてくれました。
訪れたのは、滋賀県守山市にある遠藤醤油株式会社。創業以来100有余年、昔ながらの木桶仕込みを伝承し、地産地消の本醸造しょうゆ「琵琶のしずく」の醸造元としても知られています。「琵琶のしずく」は、滋賀県産の丸大豆、滋賀県産の小麦を使った本醸造の濃口しょうゆ。「これぞ、しょうゆ! 」と膝を打ちたくなるほど濃密な香りと旨みを存分に楽しめます。
「わぁ、すごい。いい香り!」。蔵に入った組合員から感嘆の声が漏れました。遠藤醤油(株)では、全国的にも珍しい木桶仕込みの天然醸造を現在でも続けており、人工的に発酵を促進せず、蔵に棲み付いた酵母の力でゆっくりと時間をかけてしょうゆを醸造しています。
「今から十数年前、雨漏りがひどくて屋根をふき替えたことがありました。万が一の時には廃業も覚悟しましたね」と、4代目の遠藤尚兵さん。なぜなら屋根を変えるということは、天井に棲みついた大事な酵母まで失うということ。とてもデリケートな環境で、微生物の力を借りた昔ながらの自然のままのしょうゆづくりが行われているのです。
「おいしいしょうゆの要点は3つ。麹とモロミ、そして火入れです」と遠藤さん。しょうゆづくりの基本の麹は、蒸した大豆と砕いた小麦、麹菌を混ぜ合わせ、温度・湿度を保った麹室で2日間寝かせて作ります。「昔は職人が寝泊まりして、24時間体制で見守っていたんですよ」。そうしてできた麹に食塩水を混ぜたものがモロミ。モロミは大きな杉の木桶に移され、梅雨の時期には酵母の働きでプツプツと音をたてながら活発に発酵します。職人はこの“モロミの声”を聞きながら具合を判断するのです。
「どれくらい発酵・熟成させるのですか?」と、ここで組合員から質問がありました。「最低でも1年半。長くて3年くらいです」と遠藤さんが答えると、「へぇ~!」と感心した様子。やはり一朝一夕で作れるものではないのです。
さて次は、熟成を終えたモロミを布に包んで圧搾機に積み重ね、ゆっくりと3日から1週間かけて搾ります。搾ったしょうゆはいよいよ最後の難関である火入れ作業へ。たとえば「琵琶のしずく」の場合は、2日かけて火入れをします。炊き上がったしょうゆは別のタンクに移して自然に温度が下がるのを待ちます。
この火入れの目的は、しょうゆの中の麹菌や酵母菌、乳酸菌の活性を止めるため。ただし加熱しすぎると、香りやまろやかさまで飛んでいってしまいます。「火入れの仕方は工場によって違います。まさに腕の見せどころ。数字には表れない勘が頼りの仕事です」。
しょうゆ蔵の見学後は、遠藤さんの奥さんお手製、味たまごや竹の子の煮物などが振る舞われ、口々に「おいしい! 」と声を上げる組合員の笑顔で溢れていました。
濃口しょうゆにかつお節やさば節のうま味をたっぷり加えた人気商品。6倍に薄めて煮物に使ったり、3倍に薄めてそばつゆにも。
【材料】ゆでたまご、だししょうゆ1:水3
【作り方】材料をジッパー付き食品保存袋に入れて一晩寝かせる。
柚子やオレンジ、温州みかんの果汁でやさしい酸味に仕上げたポン酢。自慢の本醸造しょうゆがベースの本格的な味わい。
1917(大正6)年創業。野洲川のほとりに建ち、かつては豊富な伏流水を使って仕込みを行っていました。現在でも杉の木桶で天然醸造という、古式にならった製法を受け継いでいます。