ツルンと滑らかな食感に、だしと卵のやさしい風味で老若男女問わず愛される茶わんむし。一流の料亭から家庭の食卓まで幅広いシーンで親しまれている一品です。
とはいえ、いざ作るとなると、これがなかなか大変。大きな蒸し器やセイロをひっぱり出したり、“す”が入らないよう細心の注意を払ったり…。そんな茶わんむしを手軽に食べられるチルド食品として発売したのが、福井県越前市にある株式会社ふじや食品です。
創業は昭和28年。豆腐職人だった初代社長が、当時、高級料理で庶民の口には入らなかった玉子どうふに目を付け、国内で初めて容器に入れ量産化したことが、業績を飛躍的に伸ばすきっかけになりました。ただし、さっぱりと食べやすい玉子どうふの需要が集中するのは夏場。そこで冬場向けの商品として開発されたのがたっぷりの具とトロトロ食感が人気の「CO・OP 具の多い茶わんむし」。そのこだわりを製造工場に聞きました。
ふじや食品は玉子どうふが原点だけに、鶏卵へのこだわりはひと一倍。福井県産を中心に工場からトラックで2時間圏内の養鶏場と契約し、採卵2日以内の卵を4~5日以内に使い切ります。さらにハウユニット測定(※)で、高級位Aランク以上の卵しか使用しません。「卵は鮮度が命ですから」と、品質保証室品質管理課の大舘康洋さんは強調します。
2010年の発売以来、組合員の声を取り入れながら何度もリニューアルした関西風だしも評判で、本枯れ節をベースにコクと深みを与えるさば節エキスや焼あごエキス、さらに昆布エキスを調合しています。また、下味を付けた鶏もも肉や丸しいたけといった具材からもいいだしが染み出すので、動物性うま味成分のイノシン酸、植物性うま味成分のグルタミン酸、きのこ類に含まれるグアニル酸の相乗効果で、だしの風味をより一層引き立てているのです。
そして気になる“具の多さ”は、現在なんと8種類。ふじや食品が手がける茶わんむし製品の中でも、群を抜く具材比率の高さです。その中身は、脂が乗ってうま味の強い鶏もも肉(タイ産)、スライスよりもジュワッとかみごたえのある丸しいたけ(中国産)、穂先の柔らかな部分だけを使用する竹の子(中国産)、ボリューム感のあるヒラタケシメジ(中国産)、えび(ベトナム・タイ・インドネシア産)、かまぼこ(日本産)、銀杏(中国産)、枝豆(中国産)。すべて水流式異物除去装置や金属探知機、目視などで検査・選別を行い、商社と連携しながら産地視察も実施しています。
ところで通常、茶わんむしの具は沈んで見えにくいのに、CO・OP具の多い茶わんむしは、フィルム(ふた)の上からでも具沢山だとわかります。「容器に注入し加熱殺菌する時にカップをひっくり返しているからですよ」と、商品企画開発室の吉村征樹さん。ひと手間かかる作業ですが、開けた瞬間の見映えのよさは喜びに直結するもの。さらに一昨年、容器をアイボリー色から黒色に変更し、そのまま食卓に出しても遜色のない高級感を演出しています。
「レンジでチンはできないの?」という声が多いのも事実ですが、具材がたくさん入っているため電子レンジでは均一に温まりにくく、場合によっては破裂してしまう恐れもあります。やはりおすすめは、「湯せん」。たっぷりの水を鍋に張って商品を入れ、フタをせずに中火で加熱します。沸騰したら弱火で約6分温めてでき上がり。一度に2個、3個、一緒に湯せんしても構いません。夏場は冷やしてそのまま召し上がってもおいしいですよ!
牛乳に生クリーム、ワインを使い、コクのあるクリーミーなグラタンに仕上げました。野菜粉末を練り込んだパスタを敷き詰めてルウを流し込み、かぼちゃ、にんじん、ブロッコリー、チーズをトッピング。仕上げのミートソースで見た目も鮮やか、ボリューム感あるひと品です。
原料であるごまの香りを最大限に引き出すため、直火で焙煎しつつ、うま味成分がある中心部までは強く加熱せず旨みを損なわないようにするこだわりが。そのごまを練り(ごまの粒子をより細かくしてなめらかに仕上げたもの)を使用し、くず粉を加えてなめらかな食感に仕上げています。
株式会社ふじや食品
商品企画開発室・吉村征樹さん(左)、品質保証室 品質管理課・大舘康洋さん(右)