朝食のパンに挟んだり、お弁当のおかずにしたり。サラダやスープの具材としても大活躍のCO・OP ロースハム使い切りパックは、冷蔵庫に常備している家庭も多い商品ですが、人気の秘密は手軽でおいしいだけでなく、「無塩せき」であること。
製造するのは、長野県上田市に本社・工場を構える信州ハム株式会社。千曲川のほとりにあり、信州の山々に囲まれた自然豊かなこの場所で、CO・OP ロースハム使い切りパックは毎日製造されています。ちなみに「無塩せき」とは塩分を使わないという意味ではなく、原料の豚肉を塩などの調味液に漬け込む工程で、亜硝酸ナトリウムなどの発色剤を使用しないこと。
食品添加物への懸念が社会に大きな波紋を広げていた1970年代、信州ハム(株)は食肉加工業界では先駆的に無塩せきハムの販売に踏み切りました。「無塩せき」のパイオニアであり、トップシェアを誇る信州ハムを訪ねて、ハム作りのこだわりを聞いてきました。
「無塩せき」とは、塩などの調味料に原料肉を漬け込む過程で、亜硝酸ナトリウムなどの発色剤を使用しないこと。無塩せき=添加物を一切使用しないという意味合いではありません。もちろん、通常の塩せきハムも国が認めた添加物の使用基準をクリアしており、鮮やかなピンク色で見た目もよく、長持ちで、コストを抑えて安く提供できるというメリットがあります。
一人ひとりが選択する力を持ち、価値観や目的に合わせて上手に使い分けましょう。
通常のハムに比べ、発色剤を使用しない無塩せきハムは色味が悪く、発売当初は長らく消費者に敬遠される日々。しかし「現会長が当時、『これは将来必ず消費者に受け入れられる商品だから頑張れ』と。まさに先見の明でした」と語るのは、信州ハム(株)生産本部長の古金和幸さん。
その後は「なるべく添加物を控えたい」という消費者意識の高まりを受け、コープきんきの要請で今からおよそ12年前、市場でポピュラーになりつつあった小量パックの連結タイプを無塩せきのロースハムでも製造することに。それがCO・OP ロースハム使い切りパックの誕生です。
ロースハム使い切りパックの最大の味の特長は、肉のうま味がしっかりと感じられること。発色剤はもちろん、着色料や保存料、結着補強剤のリン酸塩も使用していないので、肉本来のうま味がダイレクトに味わえるのです。
現在使用している豚肉は、カナダと南米産が中心。2年前に新生産管理システムを導入し、生肉の入荷から製造、包装までを一元管理しています。「原料肉の身元をトレースできるので、ハムに適した産地やパッカー(食肉処理業者)をたどっていけるんですよ」と、信州ハム(株)・品質保証部部長の秋山英二さん。
さらに1パックあたり3枚入りの「3」という数字もポイント。核家族化が進んだ現代は一人っ子の家庭が多く、3の倍数が商品設計の基本とされているのです。よって一般的な3人家族を想定し、無駄なく衛生的に使い切るため1パック3枚が標準となりました。
今ではほかのハム・ソーセージメーカーでも無塩せきに取り組む企業が増えましたが、信州ハム(株)はデリケートな無塩せき製品の品質を管理する上で、工場内の生産を一方向に流れるI型ラインにしています。これは生肉に近い汚染区から出荷に近い清浄区への逆戻りを防ぐため。
また、国が進める衛生管理方式のHACCP認証を取得しただけでなく、国際的な食品安全基準のFSSC22000認証を今年5月に取得。さらに米国製パン研究所が定めるAIBフードセーフティを採用し、日常的な整理・整頓・清掃を徹底しています。また、全体の26%を占める外国人従業員にも各国語の貼り紙や通訳を介して衛生管理に対する意識改革を行っています。
すべては食の安全のため。42年に渡って無塩せきに取り組んだ、信州ハム(株)の原点です。
本場ドイツの製法を受け継ぎ、3日以上熟成させた本格的な味わい
粗挽き豚肉のジューシー感に加え、鶏肉を配合して柔らかな食感に
全国でも屈指の少雨乾燥地帯にある長野県上田市はハム作りに最適な地域。1分間に1tの豊富な湧出量を誇る地下水を工場内の浄化設備で飲料適の水にして、原料肉の解凍や機械の洗浄などに使用している。生産品目はハム・ベーコン・ソーセージ、生産量は年間9,500t。