恩納村産味付糸もずくは、淡塩さば切身(腹骨なし)などの水産加工品でもおなじみの株式会社井ゲタ竹内で作られています。鳥取県境港市で創業した1950年当初から「自然が生きている食品をつくる」という理念を大切にし、添加物に頼らない佃煮製造から始め、1972年に島根県隠岐島の天然もずくを使った「パック入り味付もずく」を業界で初めて製品化しました。
その後、隠岐島のもずくが採れなくなってきたため、原料もずくの生産者となってくれるところを探し、沖縄県の恩納村漁協と出会うことができたそうです。(株)井ゲタ竹内が製造する味付もずくは、もずく生産者の恩納村漁協とメーカーの(株)井ゲタ竹内、そして消費者であるコープしがの3者が協力して取り組みをすすめる商品です。
今回は、(株)井ゲタ竹内の工場を訪問して、製造のこだわりだけでなく、もずく産地での取り組みなど、たくさんのお話をうかがいました。
もずくは海藻の中でも〝褐藻〟というヒジキやコンブと同じ仲間。水深3~5メートルのところで養殖され、ほかの海藻に付いて育つことから「藻に付く」→「もずく」が語源と言われています。
大きく「太もずく」と「糸もずく」に分けられ、一般的に〝もずく〟と呼ばれるのは、コリコリとした食感が特徴的な太もずく(ナガマツモ科オキナワモズク)を指すことが多いそうです。糸もずく(モズク科モズク)は、太もずくの1/3くらいの太さで、ぬめりが多くツルツルした食感。「同じように見えますが、実はレタスとキャベツくらい違います」と(株)井ゲタ竹内のシニアマネージャー・山石さん。
もずくの養殖は米作りに似ていて、①種(胞子)を増やす ⇒ ②網に種付け ⇒ ③浅瀬で芽出し ⇒ ④深い場所に移し育成 ⇒ ⑤収穫 ⇒ ⑥塩蔵 ⇒ ⑦一斗缶に保管。これを毎年繰り返します。収穫時期は糸もずくが1~2月、太もずくが4~6月です。
もずくは、低カロリーで、カルシウムや鉄分といったミネラルが豊富。また、もずくのぬるぬる成分はフコイダンという水溶性食物繊維で、胃の粘膜を保護したり腸の働きを整えたりする効果のほかに、免疫機能を高める効果もあると言われています。
恩納村漁協のある沖縄県恩納村は沖縄島北部西海岸に位置する人口約1万人の村で、国内有数のリゾート地域。1977年にもずくの養殖に全国で初めて成功し、海藻養殖と沿岸漁業が盛んで、若い生産者も増えているそうです。
恩納村漁協は「里山」に対して「里海」という考え方を持ち、人々が自然に積極的に関わることで、豊かな海(水産資源・観光資源など)を守り続けています。特に生態系の要である沖縄のサンゴ礁は、もずく養殖にも大切な役割。このサンゴ礁を守り再生させる事業にも取り組まれていて、生協も協力をしています。
恩納村漁協から塩蔵の一斗缶入りで入荷した原料もずくは、製造に入るまでマイナス5~10℃の低温で保管されるので、長期間にわたり品質が維持されます。「原料は60缶を1単位として、生産者や採取日、入荷日などが細かく管理されています」と、研究室品質保証キーパースンの渡辺さんに教えていただきました。
製造工程で特に重要なのが③の手作業による選別。30人ほどの従業員が、コップ1杯程度のもずくを専用の選別台に広げ、ていねいに目と指先の感覚で細かな異物(小さなエビ、ほかの海藻、養殖ネットの切れ端など)を取り除いていきます。選別で出てきた異物の情報は、ロットごとにまとめて産地に伝えられ、品質の改善に活かされるそうです。また、④の湯通しによる殺菌は、家庭で行ってきた昔ながらのひと工程。味付けも家庭で作るようなシンプルでまろやかな酸味に仕上げています。
工場はHACCP(※)という衛生管理の認証を取得し、衛生面での管理も徹底しています。
沖縄のきれいな海を守っていくために、恩納村漁協ではサンゴの再生に取り組んでいます。コープしがでは(株)井ゲタ竹内の恩納村産もずくの商品利用1点につき1円を「サンゴ再生もずく基金」として恩納村漁協に送り、サンゴの再生に役立ててもらっています。