鳥取県・米子市内から車でおよそ30分のJAとっとり西部「大山青果物集出荷予冷センター」。こちらでは昨年11月に産直商品の仲間入りをした「大山ブロッコリー」を集荷・出荷しています。大山町を中心とした地域のブロッコリー栽培は、昭和40年代半ばにスタート。まもなく50年になる歴史があります。現在JAとっとり西部管内は、西日本一の生産量と言われるブロッコリーの大産地。鳥取県全体では全国7位の生産量を誇ります。
出荷先は地元・中国地方だけでなく、その半分が関西へ、また中京地方にも届けられています。
「大山ブロッコリー」はその名の通り、中国地方の最高峰・大山を眺める山麓地域を中心にした地域で育ちます。豊かな土壌の恩恵を受けながら、品質管理が徹底された鳥取県のおいしいブロッコリーです。
昭和46(1971)年に大山町でスタートしたブロッコリー栽培は、作付面積も年々増加し、1980年代後半には本来の「秋冬(越年・春)どり栽培」だけでなく、「初夏どり栽培」も確立し、長期にわたって出荷できるようになりました。圃場での栽培サイクルを考えながら計画的に植え、コンスタントに収穫し周年に近いお届けができています。
播種(種まき)1月~3月
定植3月~4月
収穫5月~7月上旬
播種7月~10月上旬
定植(※)8月~10月
収穫9月~翌4月下旬
まったく取り扱いがない時期は8月のみ。地中海地方原産のブロッコリーは冷涼で乾燥した気候に適し、暑い時期は収穫できません。また、収穫するのは頂花蕾(つぼみ)部分のサイズがL(12~13㎝)になったものから。すべて手作業で収穫していきます。
大山のふもとの栽培地域は黒ボク土壌(※)。これは長い時を経た大山の恵みともいうべき、極めて水はけのよい肥沃な土壌で、ブロッコリーづくりに適しています。実は、今回の取材は台風22号が三陸沖で温帯低気圧となった直後の昨年10月末。台風による風雨で出荷数が落ち込んでいました。とにかく水・湿害に弱いのがブロッコリー。原産は地中海地方であり、適温は20度前後。しっかり寒暖の差があり、暑過ぎず・寒過ぎず雨は適度に降るのがブロッコリーの生育にはいちばんです。
※黒ボク土壌=火山灰土。腐植含有量(植物が腐って土に返った成分)が多く、火山灰成分と混ざり黒い色をしています。
ブロッコリーは収穫した瞬間から鮮度が落ちはじめます。そのためブロッコリーの呼吸がゆるやかな気温の低い夜間・早朝に収穫。出荷ピーク時は午後10時から翌朝の午前9時までの収穫作業です。生産者はヘッドライトを付け、Lサイズの頂花蕾のみを選んで収穫。鮮度保持フィルム入りのダンボールに箱詰めし、「出荷予冷センター」へ持ち込みます。
「秋冬どり栽培」のブロッコリーの場合、ハウスで播種し育苗するのは約30日、その後畑に定植し育つこと約60日で収穫となります。「越年どり栽培」は、寒い時期に育つため播種してから収穫まで約140日。実は12月~2月の寒さの厳しい時期こそブロッコリーがよりおいしい時期。寒い時期には体内濃度を上げて自分が凍らないようにするチカラが働きます。低温で蔗糖などの成分を蓄積するからです。
順風満帆だった大山町のブロッコリー生産ですが、平成3(1991)年からの約7年間は産地として厳しい状況を迎えました。まず連作による病気の発生、さらにアメリカからの輸入ブロッコリーの増大などで、価格が低下し一時低迷。しかし平成6(1994)年、JAとっとり西部が誕生すると、翌平成7(1995)年には全国に先駆け「葉付き」での出荷、さらに出荷形態も縦詰めからコンパクトにできる横詰め(出荷経費の低減)に変更、加えて輸入品規格よりも大きいボリュームでの出荷(Lサイズ:12~13㎝)をはじめるなど、様々な工夫と努力を重ねました。その結果、産地面積は拡大し西日本ではトップクラス、全国有数のブロッコリー産地になったのです。
平成12年からはそれまで手作業だった定植を機械化(トレイで育苗し、機械で植え付け)、さらに機械化を進めています。しかし収穫だけは手作業です。また次世代の消費者を育てるための取り組みとして学校・幼稚園などで食育授業も実施しています。
大きいブロッコリー。真ん中から出てくる花蕾(つぼみ)のみをブロッコリーとして収穫します。横から側枝と呼ばれる枝、大きな葉が実りますがそれは収穫しません。ブロッコリーの収穫後は土壌の栄養分として鋤きこみます。
アメリカ産ブロッコリーが登場し、国産の差別化を図るための葉付きのアイデアは平成7(1995)年、鳥取県が全国に先駆けて始めた取り組みです。コープしがの組合員さんにお届けする「大山ブロッコリー」にも葉がついています。
茎は捨てられていませんか? 最近では茎もだんだん食べるようになりましたが、実はアメリカでは「生食」、あるいは茎を食べるのもいたって普通。外皮はむいたうえで、「きんぴら」やスライスしてマリネ風に食べるのもおすすめです。