北海道は言わずと知れた農業地帯。和食、洋食問わずさまざまな料理に欠かせない、玉ねぎとじゃがいもの大産地です。玉ねぎの国内生産量の約半分、じゃがいもだとその8割近くが北海道産になります。昨年の収穫前に北海道を直撃した台風では大きな被害を受け、ポテトチップス用のじゃがいもが不足したとニュースにもなったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
北海道産の玉ねぎ、じゃがいもは、どちらも春に植え付け秋に収穫して、翌年の春先まで全国に出荷されます。
今回は、コープしが組合員理事の産地視察で訪問した産直生産者の南空知玉ねぎ出荷グループと、折笠農場の2カ所を紹介します。
札幌市と夕張市の間に位置する南空知玉ねぎ出荷グループは、南空知地区(岩見沢市・長沼町・栗山町)のこだわりを持った生産者32名のグループ。夕張川の肥沃な沖積土に恵まれた玉ねぎの産地です。グループ会長の坂野俊一さんにお話を伺いました。
お父様の代に、田んぼから玉ねぎに切り替え、22歳から約35年間、玉ねぎひと筋で約11ヘクタールの畑を管理する坂野さん。「自分たちで作った作物が消費者にどのように評価されるかを肌で感じたい」と、産直取り組みを行い、肥料にこだわり農薬の使用量を減らすように努めています。
玉ねぎの栽培は苗作りからスタートです。秋に玉ねぎの収穫が終わると、雪が降るまでに育苗ハウスの準備が始まります。豪雪地帯ですのでハウスがつぶれないよう、除雪が冬の間の大切な仕事となります。そして、2月10日前後に、玉ねぎが病気にならないよう管理した土に種をまき、苗作りが始まります。
ハウスで作られた苗は、4月20日頃から機械で畑に植え付けていきます。植え付けについては、特に水はけに注意しています。肥料は、秋と春になたね粕や米糠、鶏糞などの有機肥料に化学肥料とミネラル肥料をバランスよく与えます。農薬は、病気発生の予測をきちんと行い、予防剤を適切に使用するようにしています。このようにすることが結果的に農薬の使用量を減らすことにつながります。そして、早生品種は7月下旬ころから収穫となります。
ここで作られている品種は「北もみじ2000」や「オホーツク222」など、病気に強く貯蔵性の良いF1(交配品)がほとんどということですが、昔ながらの在来種「空知黄」も作っておられます。この品種は坂野さん自身が種を取って、仲間の方に提供されています。甘みがあって辛味とのバランスも良いのが特徴で、商品案内書では「北海道産たまねぎ(黄玉)」という名前で載っています。
折笠農場は北海道幕別町にあり、福島県から約110年前にこの地に入植し、お話をお聞きした折笠健さんで5代目になるそうです。現在の耕作面積は95ヘクタール〈ディズニーランド(51ヘクタール)の約2倍〉あるそうです。折笠さんと同じような考えで作物をつくる人と「折笠農場グループ」を作り、幕別町や富良野市、斜里町などに約50人の生産者がいます。
折笠農場とコープしがとの取引の始まりは、コープしがとなる以前の生協の時代、健さんのお父様の代に始まりました。
当初、じゃがいもの品種はメークインで減農薬を目指していたそうですが、病気に弱く、減農薬や無農薬栽培が難しい品種でした。そのようなときに、育種の専門家が提案する「北海こがね」を生協の組合員に試食してもらうと、とても高い評価を受けました。でんぷん質が豊富でも煮崩れしにくくおいしいという特徴を持つ品種で、今では折笠農場が生協に供給するじゃがいものほとんどが「北海こがね」です。農に関わる技術者と生産者と、生産物をちゃんと評価できる消費者(生協)のつながりが大切と思った出来事だったそうです。
折笠農場が目指すのは、畑を開拓時代の豊かな土に戻して作物を作ること。そのために、収穫目的ではないトウモロコシやえん麦などを作り、緑肥として畑にすき込んで、有機物を入れるようにしています。また折笠農場では、自然栽培(無農薬、無肥料)にも取り組まれています。この地にあった病気に強くておいしい品種づくりのため試験場などと一緒に品種試験約30種類、育種試験約1,000種類の栽培を進めておられます。
昨年8月に北海道地方を襲った台風・豪雨災害の際には、ご心配や温かいご支援をいただきありがとうございました。川沿いなどで被害が大きかったところは、まだ復旧できてないところもありますが、じゃがいもの生育は順調で豊作が見込まれています。生産者が心を込めて作った農産物を皆さんで買い支えてください。