産直のきゅうりやピーマン、いちご(さがほのか)の生産者「農業法人株式会社サン・グリーン出荷組合」は、年間の日照時間が長い宮崎県・熊本県にある、約45戸の生産者グループです。
サン・グリーン出荷組合は、1992年に任意組合として設立され、その後現在の法人の形となりました。コープしがの設立時期とほぼ同じ時期で、そのころから産直産地としてのおつきあいが始まりました。サン・グリーン出荷組合の基本は土作り。「良い堆肥を使って生産者が苦労して作った商品は、その価値を分かってもらえる人に食べて欲しい」という想いとコープしがの考えが合致しました。
九州の産地とコープしがの産直取り組みが始まったのは、ちょうどこの間を結ぶ物流のルートがあったから。その後、近畿の各生協や中国地方の生協にも順次取り扱いが広がっていったそうです。
安全安心な野菜作りに取り組むサン・グリーン出荷組合の代表で、設立当初から栽培の指導にも当たられてこられた黒木康司さん(写真左)にお話をお聞きしました。
サン・グリーン出荷組合のパック加工センターは、宮崎市の北約40kmの都農町(つのちょう)にあります。
宮崎県は日本で有数の畜産県で、堆肥の材料となる家畜のふんなどはたくさんありますが、大量の堆肥を土に投入すると作物に有害な成分(硝酸)が蓄積したり、残った肥料成分が地下水や河川を汚染したりするそうです。そのような土からできた作物を人間や家畜が食べると、健康に害を与えることになります。また、生産者は出荷用の野菜と自分の家族が食べる分を作り分けていることがありましたが、自分の家族に食べてもらいたい野菜を出荷するようにしなければいけないと黒木さんは思ったそうです。
しかし、安全性に気を付けて作った野菜も、化学肥料や農薬をたくさん使って作った野菜も同じように取り引きされたのでは生産者の努力が報われません。ですから、安全な野菜を作ろうとする生産者と、苦労して作られて野菜の価値を分かってくれる消費者の結びつきが必要だと思い、このサン・グリーン出荷組合を立ち上げたそうです。
サン・グリーン出荷組合は土の大切さを常に考えています。土に有機物(堆肥)を入れるとよいと言われますが、その質と量が大切です。サン・グリーン出荷組合は、必ず土壌チェックを行い、まわりの環境も考えて必要量の堆肥、ボカシ肥料(※)を入れます。
生産者は長年の経験に頼って生産しても、良くできる人(畑)と出来の悪い人(畑)ができるそうです。これを温度・湿度・土壌水分・肥料の量・水質などの科学的データから比較すると、原因が分かり、最適な栽培環境や条件を突き詰めることができます。代表の黒木さんは、測定データを元に大学との共同の勉強会なども行い、生産者の栽培指導に取り組まれて品質の安定や若い生産者が育つ環境づくりにも取り組まれてきました。
※ボカシ肥料…米ヌカ、油かす、魚カス、骨粉などに微生物を入れて発酵させたアミノ態肥料。土壌環境を改善し、おいしく日持ちする作物がとれるようになる。
安全で安心しておいしく食べられる農産物作り
環境と健康を考えた環境型栽培を実践(食健農法)
後継者が育ち、生産者が高齢化を迎えても、農産物作りに取り組める環境づくり
農薬、化学肥料に依存しない、科学的根拠に基づく農業への取り組み
作る人、食べる人の顔と顔の見える関係を大切にする
きゅうり、ピーマンとも高温を好む作物で、冬場は暖かい九州でもハウスでボイラーにより加温して育てられています。5月頃にお届けのきゅうりは2月に植え付けたもので、6月ぐらいまで出荷の予定です。きゅうりは病気が出たり肥料や水が不足したりするとバランスが崩れて曲がることが多くなるそうですが、サン・グリーン出荷組合では曲がったものもある程度の価格で引き取って、“わけあり”として出荷しています。
ピーマンは、秋に植え付けをして11月頃から翌年の7月頃まで収穫します。サン・グリーン出荷組合のピーマンは、独特の香りが少なく、生でもおいしく食べていただけます。これはピーマンが完熟する前の若い状態で収穫しているためです。完熟まで置いておくと肉厚になり1個の重さも重くなるので生産者には得になるのですが、おいしく食べてもらうために収穫時期を早めているそうです。
昨年の熊本地震では、サン・グリーン出荷組合の生産者に人的被害はなかったそうです。でも余震が続いたのでなかなか家に戻ることができず、車での避難生活がしばらく続いた人もおられました。野菜の集荷の時に宮崎の生産者から必要な物資を届けお互いに協力し合ったそうです。現在は全員自宅に戻られていますとのことでした。コープしがからのお見舞いにお礼のことばをいただきました。