近年様々な栄養素の重要性が取り上げられるようになりました。「葉酸」もそのひとつ。2000年に厚生労働省より、妊娠可能女性への葉酸摂取が推奨されたことから、特に子育て層での認知度が高い栄養素です。
水溶性ビタミンB群の一種である葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血ビタミン」と言われ、悪性貧血の予防に重要です。また、細胞分裂や成熟にも大きく関わり、胎児にとっては必要不可欠な栄養素です。胎児の脳や脊髄のもととなる「神経管」が形づくられる妊娠初期(妊娠7週頃まで)に葉酸を十分摂っておくことが、赤ちゃんに起こる先天異常「神経管閉鎖障害」の発症リスクを低減させるのです。
葉酸を多く含む食品は、レバー、緑黄色野菜、納豆、いちごやアボガドなど。日本人の食事摂取基準によると、18歳以上の成人の推奨摂取量は240μg(1μg(マイクログラム)=1gの100万分の1)であり、通常バランスよく食事ができていれば摂取可能な量です。ただし、胎児の事を考えると更に望まれる摂取量が増えるため、常日頃から摂取を心がけておく必要があります。
葉酸は光や熱に弱く酸化しやすい成分です。葉酸を効率よく摂取するには、できるだけ食材の新鮮なうちに手早く調理して食べることをおすすめします。また、ビタミンB12やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで、葉酸の効果を上手く利用できます。食事から摂る葉酸で過剰症の心配はありませんが、サプリメントは吸収率が高いため記載の目安量は守りましょう。
最近の研究では、葉酸が欠乏すると動脈硬化の危険因子と考えられている血中ホモステイン(アミノ酸)が上昇するとの報告があります。血中葉酸濃度が高いほど高齢者の認知機能が高かったとの報告もあり、今後の高齢社会において、葉酸の認知症予防の研究が期待されているところです。
文:医療部管理栄養士 布施順子さん