本文へ

たべる・たいせつ
子どもの「味覚」を広げよう

 人の口の中には、味を感じる「味蕾(みらい)」という細胞があり、味の刺激を脳に刻んで学習していきます。生まれたての新生児でも、未熟ながら甘味や酸味などいろんな味覚が備わっていますが、味覚が完成するのは小学校の高学年ぐらいだと言われています。離乳期から子どものころに経験した味覚は脳に刷り込まれ、「この時期の味の記憶」がその後の「食生活の基本」になります。おふくろの味とか故郷の味を好むのもそこからきています。ですので、この幼少期にいかにいろんな味の刺激に触れるかが大事であり、甘味・塩味・辛味・酸味・苦味の5味のほかに「うま味」もしっかりこの時期に覚えてほしい味になります。世界無形文化遺産に登録された和食の特徴は、このうま味が持ち味で長寿食と言われます。濃い味に慣れてしまうのか、うま味を利用した薄味でもおいしいと感じるのかによって、大人になってからの生活習慣病にまで影響を及ぼしてきます。

 最近では公園デビュー並みに、1歳になったらファストフードデビューという家庭もあるようですが、濃い味好みになるばかりでなく「単一の味…いつでもどこでも同じ味」なので、味覚に広がりが期待できません。同じように、市販のベビーフードも工場で規格通りに作られているのでいつも同じ味付けです。手作りだと同じ料理を作っても同じ味にはならず、甘かったり辛かったりいろんな味の経験になるので、上手に利用しましょう。

 また、味覚の形成は味付けだけでなく、舌触りやかみごたえといったものにも影響されます。幼少期にはその時期に合った大きさや固さの料理を用意し、咀嚼を充分にさせることが大事です。咀嚼をすることで、食事が唾液としっかり混ざり合い、舌の上に広がることで味をとらえて脳に情報として刻み込みます。このように「食の体験」「味の経験」をしっかり積み、時間をかけていろんな味に出会うためにも、まずは生活リズムをしっかりつけてお腹を空かせ、楽しい食卓で楽しく食べられるようにできるといいですね。

ページトップへ