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ライフジャーナル
震災から4年。東北の今 ~これからは“心のケア”が重要に~

東日本大震災から4年。被災地の復興は進んでいるのでしょうか。
コープしが組合員へのアンケートでも、「仮設住宅で暮らす人は、今もたくさんいるのですか?」
「滋賀で暮らす私たちにできることは?」など、被災地の現状を知りたいという声が多数寄せられました。
今回は震災や津波に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、大きな被害を受けた福島県の今について、
「コープふくしま」の斎藤恵理子さんにお話を伺いました。

高齢化が進む仮設住宅

斎藤恵理子さん
生活協同組合 コープふくしま 理事

 震災から4年が経ち、大きな被害を受けた道路や鉄道が復旧するなど、少しずつ復興の兆しが見えてきました。その一方、いまだにたくさんの方々が仮設住宅などで暮らしておられます。

 「コープふくしま」では、定期的に仮設住宅を訪問し、住民の皆さんと交流の場を設けていますが、今後は仮設で暮らす高齢者の心のケアが必要になってくると感じています。

 もちろん、なかには仮設住宅を出て家を建てるなど、新しい暮らしをスタートさせた方もいます。でも、その多くは60代以下の世代。一方、現在も仮設住宅で暮らす方の多くは、70歳以上の高齢者です。若い世代には、新しい一歩を踏み出すエネルギーがありますが、高齢の方が新しい一歩を踏み出すのは、とても大変なことなのだと感じています。

全国からの応援メッセージが心の支えに

 また、福島県の場合は、原発事故により避難を強いられ、仮設で暮らしている方々がいます。福島県の発表によると、いまだに12万人の県民が避難生活を送っているとのことです。なかには、自宅が残っていても自由に帰ることができず、同じ屋根の下で暮らしていたお子さんやお孫さんと離れ離れになり、地域のコミュニティーとも切り離され、夫婦二人で、あるいはお一人で寂しく暮らしている方もいます。

 そうした方々の心の支えになっているのが、全国の生協を通して届く応援メッセージです。一緒に送られてくるご当地のお菓子や特産品を見て、笑顔で旅の思い出を語り、おしゃべりに花を咲かせている方を見ると、私たちもうれしくなります。皆さん、「自分のことを気に掛けてくれる人がいる」ことに励まされています。これからも、ぜひあたたかい応援メッセージをお寄せください。

原発事故が残した心の傷

食事調査に参加した家族が日本生協連商品検査センター(埼玉県蕨わらび市)を訪問。放射性物質の測定を体験しました

 福島県の場合は、震災や津波の被害に加え、原発事故が大きな影を落としています。強制避難を余儀なくされた方、自主的に避難した方、県内に残ることを決断した方、父親が県内に残って仕事を続け、母親とお子さんは県外へ避難している方、それぞれが心に傷を負い、今も少なからずストレスを抱えて日々を過ごしています。

 屋外での運動や外遊びの機会が減ったことで、お子さんの心身への影響も懸念されています。また、原発事故の直後は放射線に関する情報が少なかったこともあり、お子さんを連れて外出した親御さんもいました。そうした方のなかには、「将来、子どもの健康に影響が出るのでは…」と自分を責めながらも、誰にも相談できずにいる方も多いのです。今後はこうした人々の心のケアも必要になってくるでしょう。

福島の農産物の安全安心にご理解を

食事調査に参加した家族が日本生協連商品検査センター(埼玉県蕨わらび市)を訪問。放射性物質の測定を体験しました

 県内の生産者にとって深刻なのが、風評被害による売り上げの落ち込みです。国が定めた食品に含まれる放射性物質量は、1kgあたり100ベクレル以下。現在、市場に流通している県産の農産物はすべて基準値を下回っています。日本の放射性物質に対する基準は世界的に見ても厳しいものです。「安心」を押しつけることはできませんが、この数値の意味をご理解いただきたいと思っています。

 県内の生産者は、安全安心な農産物を消費者に届けるため、自治体や研究機関と共に土壌や樹皮の除染を行うなど、日々努力しています。「コープふくしま」も参加する地産地消運動促進ふくしま協同組合協議会では、「福島のおいしいもの」を消費者の皆さんにお届けする取り組みと共に、農家見学を実施しています。ぜひ一度、福島に足を運んでいただき、たくさんの方に生産者の取り組みを見ていただきと思います。

 また、「コープふくしま」「コープあいづ」「福島県南生協」では、実際の食事に含まれる放射性物質量を調査するため、日本生協連の協力のもと、2011年度から陰膳方式(※)による放射性物質の測定に取り組んできました。その結果から市場に流通している県産の食材はおおむね安心だととらえています。詳しい調査結果は「コープふくしま」のホームページで公開していますので、ぜひご覧になってください。


※陰膳方式とは
実際の食事に含まれる放射性物質を測定するために家族人数より1人分多く食事をつくり、それを測定する検査方法。2日分・6食(おやつや飲料などを含む)を保存して検査センターに送り、ミキサーで均一に混ぜて測定します。


震災を風化させない、継続的な支援

生活協同組合コープしが
組織部 渡邊康彦

 震災直後、未曾有の被災状況が報道される中、日本生協連の呼びかけにより全国の生協が被災地へ支援に向かいました。コープしがも宮城県へ先遣隊として必要な燃料・生活用品などの支援物資を配達用トラックで直ぐに輸送しました。これが被災地への支援の始まりです。

 その後定期的な支援活動として2013年春まで被災地へ役職員や生産者が共にボランティア活動を続けてきました。がれき整理作業のほか牡蠣の養殖場である志津川漁協への土嚢作りのお手伝い、仮設での生活を余儀なくされた住民との交流などを活発に行いました。

 復旧・復興が進まない被災地と風評被害で苦しむ住民との関わりについてコープしがでは、2013年春から「震災を風化させない、一人ひとりに寄り添う継続的な支援」をすすめています。その一環として福島・宮城県へのスタディーツアーを実施し、組合員が現地で学び・交流することで正しい情報を地域に伝える事や、自分たちにできる支援について考えてもらう活動を焦点に取り組みました。また、総代の声から「誰もが気軽に参加できる支援はないの?」との声に応え震災を風化させない募金(活動する人たちへの支援)を毎月11日の週に始めました。被災地の現状と復興状況を知り、滋賀からみんなでできる支援として「一人ひとりが支え」「一人ひとりが寄り添い、人と人がつながりをつくる」活動を続けていきます。

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